The sun rises again.

フィクション

うそつき

また一つ、嘘をついてしまった。今日は京都マラソンがあって、それに僕は参加する予定だったのだ。しかし、直前になって、どうでも良くなってしまった。別に43キロ弱を走ることに、なんの意味があるのだろうか。みんな馬鹿みたいに朝っぱらから集合して、幹線道路を貸し切って昼間で走って、ああよかったね、というだけのことだ。これの何が楽しいのか、皆目検討がつかなくなってしまったのである。

確かにそれに応募したのは、間違いなく自分であって、だから彼女にもこんどマラソン走るんですよということを言っていて、見に来てくれると彼女は言ってくれていた。そして、ああ僕は、嘘をついた。[風邪を引いた]のではないのだ。僕は[走る気力がなくなった]のだった。走る気力がないというのも、広義の体調不良とも言えなくもないが。しかしそれは一般に言えば[どうにかなること]であって、今回の僕の判断は[自分勝手な判断]ということになるだろう。そのぐらいはわかっている。

多分走ろうと思えば、走れるのだろうと思う。数か月前から、一週間のうち少なくとも4日は10キロほどを走り込むようにしていたし、最長でも20キロは走ったことがある。いいやこういうスペック上の[走れる]が問題ではない。それは僕も、重々わかっている。わかっているがゆえに、能力としては僕は走れるんだということをこうやって書き記しておかないと、居られないのである。結局は精神の、我慢の、そしてそれはまともな大人の判断をする、ということがかけている。普通なら、ちょっと嫌になったくらいでは、走るのをやめたりしないだろう。第一、参加費用として1万円を払っているのだ。純粋にもったいない。方方への体面もある。

そういうことはわかっているのに、なんで僕は走ろうという気力をなくしてしまったんだろうか。それがわからない。もうどうでも良くなってしまった。今はただ、一人にしておいてほしい。そして一人で、こんこんと眠りにつきたい。