The sun rises again.

フィクション

節分

特にやることも無い土曜日だったので、なんとなく京都に行った。ついてもやることが無いので適当に前田珈琲で珈琲を飲み、ブラブラと烏丸から市役所の方へと歩く。自分の知らない店ができていたりまたなくなっていたりする。古い街だがちょっとづつ変わっていることがわかる。

そしてそこかしこで節分にまつわる何かをやっていることに気がつく。そういえばそんな行事があったなあということを思い出す。本当に小さい頃、たぶん幼稚園に行く前とかなので5歳前後だったと記憶しているが、うちの親父が鬼の仮面をし濃い抹茶色のパジャマに動物の毛っぽいジャケットを着て鬼として帰宅して僕に「おにはそと」をやらせるというささやかなイベントがあった。

小さい子供からすると突然わけのわからない格好をして、鬼の面を被ったやつが家に来るので、とても怖い。僕は意気地があるわけでも無いので、覚えたての「おにはそと」をやる様な余裕はなく、母曰くその場に座り込み大泣きしたという。(その後この恐怖イベントは僕ら兄妹全員が体験することになる)

大人からすると、炒り豆を食べ場合によっては恵方巻きを食べるものでしかないけれど、子供にとっては生きるか死ぬか必死だ。そして初めは必死でも何度も何度も繰り返されるとなんとなくその構造がわかってきて、そうして慣れていく。でもなれるためには最初頑張ってそして駄目になって泣いちゃうかもしれないけれどその必死なプロセスはとても大事な用に思われる。その本気は本質であり、人が生きるということはそういうことだ。

今日もどこかで泣いちゃう子供が沢山いるんだろうなと思うと、頑張れって思う。