The sun rises again.

フィクション

親父

昨日親父と初めて議論をした.二人ともちょっと酔っ払っていて,いつもは話にならないようなことで話をしたいような.二人とも言わなくてもいいことを言いたいような,そういう状態だったせいだと思う.

 

議題は世界連邦はあるべきかどうかという話だった.

彼は,現在の世界連邦として存在する国際連合は必要ない,拒否権がある議会なんて存在価値がないといった.僕は,少しでもみんなで話をしようとする,その一歩づつでも理想に近づこうとする姿勢は評価できると思っていたから,国際連合は存在意義があると反論した.

彼はそれに対して,「結局世の中は単純で力があるものがいいように言わせることしか存在できない.結局国際連合があったとしても世界の警察たる米国がいいようにいうことしか決まらないし,それをごまかす国際連合は気に入らない」と反論した.

確かにそれは一利あると僕も思う.

しかし,国際連合がなければ,みんなの意見を聞こうとする場すら与えられない.国際連合が存在することで,アフリカやアジアの小国でも一応の立場を表明できるし,もし米国が勝手にそれを拒否して自分のいいように行動したとしても,それらの多数決を「拒否する」というステップを踏む必要があり,そのことだけでも大きな足かせというか,勝手な行動を思いとどまらせることにつながるのではないかとそう思った.

多分正解はないのであろう.しかし,そうやって話をすることが,楽しかった.

しかし親父はそうではなかったようで,最後僕に遠慮したのかだんだんと語尾が弱くなるし,次の日もなんだかよそよそしい感じであった.

それが僕は悲しかった.何故ならば,そう思うということは,僕をある意味で意見ではなく人格否定として議論をしているということだったのだから.

僕は,悲しかった.別に意見が異なったことはどうでもいいのだけれど.それが悲しかった.