The sun rises again.

フィクション

満たされるごはん

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最近ひどく生活に締まりがない。それは僕を縛るものがほとんど存在しないからであるのは明確であって、仕事もあまりやんや言われない、恋人もいないから定期的に人と会う予定もない、一人暮らしだからお金がないわけではない、などなどの要因が重なって、日々の生活でやりたいことは、大体出来てしまうのである。たとえば大学生の頃であれば、スーパーでトマトを買うなんてことは想像が出来ないことだった。一つ100円もするトマトは、高すぎたのだ。そして泣く泣く100グラム38円の鶏肉をキロ単位で買い込み、二匹ぶんの頭が詰まったタイのあらを100円で買いよなよな1時間弱かけて煮込んでいた。

それが今では特に値札を見ずに野菜だろうが魚だろうが買うようになった。食べたいものを買えるようになったのだ。これはとても素晴らしいことであって、世の中には買いたくても買えない人もいるのだから、これに僕は感謝しなくてはならない。とはいえ、達成されてしまった今この現状を省みると、思ったよりも楽しくないというのが正直なところで、節操がなく締りのない、だらしないように感じられてならない。

美味しいものを毎日食べても、大して楽しくないのだ。まあこれは高校の時からなんとなーくわかっていたことである。外食も有る一定の頻度を超えていると特別感がどんどんなくなり、ご飯を食べる意外の価値がだんだんとなくなっていく。確かに美味しいところ、綺麗な器で出てくるところ、雰囲気のいいところ、という価値はあるけれど、あきらかにそれは価格には見合っていないように思われる。結局お腹いっぱいになっておしまいなのである。

最近とみにお腹がいっぱいになるだけの食事が多い。それを脱するべく今日はサンドウィッチを食べに、最寄りの駅近くの喫茶店にでかけた。

こじんまりとした、それでいてとても綺麗でモダンなカフェで、サンドイッチもしっかりと調理されていて、とても美しかった。

見た目に負けない味で、とても美味しかった。珈琲もとても美味しい。お腹以上に気持が満たされたご飯だった。