The sun rises again.

フィクション

海外旅行と利害関係

約10年ぶりに海外にいった。前回は親に連れられて行ったハワイで旅程から準備から僕はほとんど関与していないいわばお客さん的な旅行だったので、あまり記憶に無いし主体性も殆ど無い。故に今回の旅行は自分で考えて行くという意味で言えばはじめての海外になる。

とはいえ海外に行くことが決定したのは僕というよりむしろ僕のすばらしい友人たちの適当なノリで「海外行ったら楽しいんじゃねえか?」「ええな」というよくある飲み会の一幕を本当にしてしまったことがもとであって、仕事が忙しいというなんとも言えない理由にも文句を言わず、旅行会社からなにからすべてを手配してくれた友人二人には感謝しか無い。

さて行き先はタイだった。直前までベトナムに行くという話だったがベトナム行きのツアーがなくなってしまったため急遽タイにしたのだった。予定が決まった段階で僕はまだパスポートを持っておらず、案外パスポートの発行までに時間がかかることがわかり、しかも戸籍謄本まで必要だという。郵送で取り寄せていると時間がなくなる為泣く泣く母親に頭を下げて取ってきてもらい、会社を午前休んでパスポートセンターに行った。こんなもん全部オンラインでやれるやろ、という自分の不手際を棚に上げたことを思いつつ申請を行い、無事旅行の3日前にパスポートを手に入れた。

他に必要なものは金ぐらいだろうと踏んで、ただの日帰り旅行の様な格好で関西国際空港まで行った。友人たちはちゃんとした海外旅行の人たちで、僕だけ国内旅行(しかも一泊くらいのやつ)のような格好で明らかに浮いていた。

 

そうやってようやくタイにたどり着いたわけだが、結論からいうとタイはいいところだった。

まちなかはとても街(語彙力がない)だし、自然もあるし、道は東南アジア的雑多さがあり、普通にタクシーに乗っているだけで楽しい。タクシーはホテルや有名なデパートの担当のおっちゃんに頼まないで流しを捕まえると、ほとんどの場合でボッタクリの値段をふっかけてくるのが玉に瑕だが、それも向こうの人から見れば「金を持っている人は払ってくれや」というごくごく自然の生きるための術であるししようがないのだと思う。タクシーの運転手は悪くはない。悪いのはタイの生産性が日本よりも低いという点にあるのだから。(だからといって高い値段を払うわけではないが)

利害関係者以外のタイの人はとても親切だ。

ホテルの人、公共バスの運転手のおじさん、レストランの店員さんなどなど。バスの運転手に至っては、多分向こうは英語が全くわかっていないのに行きたい場所を連呼していたらものすごいハイテンションにタイ語で説明してくれて、降りるバス停の前にこちらに来て「ここだぜお前ら!」というような謎テンションでお知らせをしてくれるぐらいには楽しい人だった。

これは観光で自分たちの生計が成り立っているということをわかったうえで優しくしているのか、そうでないのかはわからないが無愛想なのよりはよっぽど良い。しかも言葉が通じない相手に臆することなく絡んでくるのは尊敬する。自分ならちょっと出来そうにはない。

それは行き帰りの飛行機でも顕著だった。利用したのはタイ航空で乗務員はタイ人と日本人が半々(ANAとの共同運航便ゆえ)。初めは言葉が通じるほうが楽かなと思っていたが、気配りのそれが圧倒的にタイ人のほうが良い。日本人は「お前ら日本語通じるだけ感謝しろ」的高圧的態度で接客してくるのでこちらかお断りという感じであった。これも先の生計というのが聞いているように思える。というのもタイ航空からすれば日本人に悪い印象を持たれることは全く持って利益にならないからだ。一方で日本人乗務員からすればそれはどうでも良いことであり、ANAという看板もちょっと注意しないとわからないからなおのこと適当にするのは当然である。

生きることと、人に対する態度は直結していることをまざまざと感じさせられた旅行であった。

でも自分は利害関係者でもそうでなくても、優しく対応できるような人間でありたいし、そういう心の余裕をもって生きていきたいなと思った次第。

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写真はタイでは有名な TRUE カンパニーの支店である。タイでは TRUE が人気のようで TRUE Coffee から True Store はたまた True Sports まである。どれだけ偽物が跋扈していたのかが伺える。