The sun rises again.

フィクション

かわいい

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彼女から別れ話を切りだされた。理由はこちらから連絡を取らなかったこと、その期間が三週間にもおよんだこと、それに対しての事前連絡がなかったこと、の三点であるらしい。「ふーん」と思った。語彙がないが、そうとしか思わなかった。とくに連絡することが無いのに、連絡をしないことの何が悪いのだろうか。もっとも彼女から言わせれば僕がこんな気持になること自体、私に気がないってことでしょう、という解釈になるのだろうが、僕から言わせると「それは貴方がそういう行動をしたときの気持でしょ」と言いたくなる。別に直接は言わないけれど。

それなら別れますか?というと私は別れたいのではない文句を言っているだけであってなぜ別れるなんて言う話になるの?と返ってきた。初めに言い出したのは貴方の方では?と思ったけれど別にもうこの時点でこの話題を考えること自体がめんどくさくなり、丁寧に別れてほしい旨を伝えて、私達の関係は終わった。

今思うと時間の問題であったように思う。

もともとあまり話は合わないのだ。彼女の話は絶望的につまらない。自分の話ばかりだし、話す内容も僕と関係がない或いは知らない人の話を、延々と聞かされるのだからこちらとしてはビールでも飲まないとやっていられない。

上司がどうのお客がどの仕事がどうの。そして微妙に男の人の話を混ぜてくる。私は貴方以外にも相手にされていますよ、というと僕が考え過ぎなのかも知れないが、少なくともコチラとしてはその話は楽しくはない。落ちもない。なので僕は毎回「ふーん」と言いながらワインを飲むことになるのだ。そういえば彼女はよく私はよくお酒を飲むし泥酔してこれこれになった、というような話をしていたが、僕の前では結局一度もまともにお酒を飲んでいるのを見たことがない。あれはもしかすると全て嘘だったのかも知れない。まあもうどうでも良いのだが。

おそらく彼女も同じことを僕に思っていたのだろうと思う。こういう話が面白くない、というのは結局のところ、話をする粒度や思考、趣味嗜好の問題であるから一方だけが悪いなんてことは殆ど無い。彼女は悪くなく、ただただ僕に合わなかったそして合わない人を選んでしまった僕が悪い。

ではなぜ選んだのか。それは可愛かったからである。

阿呆のようだが、本当にそれ以外に思い当たるフシがない。僕は可愛い人、美しい人が好きだ。美しさを好む。でもそれはずっと身近にいる人に対して適用すると、あまり好ましい結果をうまないということを今回改めて知ることになった。

そもそも可愛い人と付き合ったのは、僕の周りの人は割合にそういう価値基準で付き合う人を決めている人が多いというのが影響している。僕は元来そういうものは、見て楽しむというか僕が所有、関与しなくても傍観しているだけでいいしそれ以上の欲求はあまりなかった。しかし世には可愛い人を彼女にしたいとか、アイドルを好きで追いかけるとか、そういうのは当たり前に観測される。それって僕からすると不思議というかそこまでする意味がよくわからなかった。そして今回の経験を経て、これは多分ずっとわからないんだろうなと思った。かわいい人は可愛いのであってそれ以上でもそれ以下でもない。かわいいを過大評価してはならないのだ。

ちょっとだけかわいいについての理解が深まったので、彼女にはとても感謝している。僕よりも自分に興味を持ってチヤホヤしてくれる新しい彼氏が早急に見つかるといいなと思っている。見つかったら遠回しにそれを僕に行ってくんじゃないか、というのは僕の予言である。