The sun rises again.

フィクション

京都

ちょっと思い立ったのだ。京都に行きたくなった。

適当に財布と携帯だけ持って、なんとなく最寄りのJRではなくわざわざ中之島の京阪の駅まで歩いた。それは大学の時良く乗った電車にまた乗ってなんとなく回顧したいという思いもあったのかも知れないし、ただ歩きたいだけだったのかも知れない。

適当に乗っていると出町柳についた。何も変わっていなかった。久しぶりに駅前のパン屋でパンを買おうと思ったら、ちょうど土曜日が定休日なのを思い出した。こうやって駅前まできて定休日であることに気がつくパターンも何度目だろうか。

お腹が空いていたので、下鴨神社の裏手にある何回か言ったことのあるうどん屋に入った。ふと目についたウィスキーをストレートで頼んだ。注文を受けてくれたのは可愛らしい大学生と思われるお姉さんで、多分ウィスキーをストレートでという意味がわからなかったらしく、きょとんとしていた。そのあとで、ウィスキーはロックですと注文を通すのが聞こえた。「ストレートですよ!」と訂正するのも品がないしお姉さんの挙動が可愛かったので迷ったけれど、その時の僕はとてもウィスキーをストレートで飲みたい気分だったので、厨房に言ってストレートである旨を告げた。お姉さんではきょとんとしていた。

最終的にちゃんとストレートの美味しいウィスキーを昼間っから飲んだ。とても美味しいウィスキーだった。甘くて、喉にピリッとくる感じがとても心地よい。正直うどんには合わないなとも思った。

 

ちょっと気分が良くなりながら散歩をしてふらっと美術展に入った。

ちょうどキュレーターのお姉さん(今日はお姉さんに縁のある日だ)が話しかけてくれて、現代美術のあれこれだったり、展覧会を開く大変さだったり、やっていて楽しいことだったりを聞いていた。やはり、一番やっていてよかったなと思うのは、現代美術なんて知らない、という人がふらっと入ってきてその楽しさに気がついてくれる時だと言っていた。

良い作品を、それを良いと思う人のところまで届けること。それはとてもとても大切な大事な仕事だと思った。自分にはそんな覚悟があって仕事をしているだろうかとも思ったけれど、その場で考え始めると相手に悪いので一旦しまっておくことにした。これは今後の宿題。

そのあと、蛸薬師通を下って行って、四条通についた。これと言ってやることはなかったのだけれど、アルコールで気分良くなった僕は「春なのだから服を買わねばならない、春らしいやつを」と何故か硬く思い込みちょっと値の張る服屋に入った。買う気も対してないときに入る服屋は、いつもちょっと気まずかったりするのだけれどアルコールでハイになったテンションで店員さんとゲラゲラ笑っていた。今度から服を買うときは一杯やってから行くのが良いのかも知れない。結局何も買わずに何故か春夏のコレクションの入った紙袋をもらった。ぱっと見ると買い物をしたていに見えて良い感じである。

これらは僕が家を出る前には思っていなかった、楽しいことだった。楽しいのバンザイ。