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The sun rises again.

たのしくにっき

我が家にて

私はこの3月が終わると社会人一年生として、世の中でやっていくことになっていて、学生としての休みはこれが最後である。周りをfacebook等で見渡すと皆沖縄だの北海道だの海外だのに旅行に行っていて、最後の学生としての休み、言い換えれば何も考えずに休める最後の期間を愉しんでいるようである。

一方私がやったことといえば、新居に置く家具を新調したことぐらいである。

家具の新調も楽しいものである。値段とクオリティから、今回はikeaで家具を買うことに決めた。ikeaの広い店内でかっこいい家具を見て回るだけでも楽しいのに、自分で買ってそれを家におけるとなると、ただ見て回る以上の楽しみがある。その場にあるかっこいい家具が自分の家に置けるという事実に、喜びが倍増する。

私の家はキッチンとダイニングが一緒になった5畳ほどの部屋と、ベットとデスクがおいてある7畳ほどのリビング兼寝室のある、ちょっと広いがただの1Kである。

当然賃貸物件であり、壁をぶち抜いたり床を張り替えたりシステムキッチンにしたりみたいな、たいそれたことはできない。出来ることといえばソファを買うかどうかだったり、ダイニングテーブルを置くかどうかだったり、テレビの場所をどこにするかだったりといった、限られたことになる。

しかしせっかく社会人としてやっていくスタートだから、よくある一人暮らしっぽい家具ではつまらない。

そう思い、すこし頑張ってカウンター型のアイランドキッチンを購入した。高さは1m弱あり、ダイニングテーブルというよりはバーカウンターの高さに近い。天板はきれいな木目の大きな天然木でできており、片側には表面がステンレスになった二段の棚が設置されている。ikeaの店内でディスプレイされているのを見て一目惚れしてしまい、予算はオーバーしていたがその場で買うことを決めた。

あとは壁一面の本棚。

本棚に関しては前の家に住んでいた頃からの憧れであった。我が家には、本棚に収まりきらず床に散らばった本があまりにも多いのである。床に投げ捨てておくのは、本を書いた作者に申し訳が立たないし、そもそも格好が悪い。綺麗に収納できる本棚を、それも壁一面に床から天井までびしっと揃えてやるのは、私の夢であり目標であった。

そうやって気に入った家具を買い、一日かけて組み立て場所を考えて出来上がったダイニングはどこから見ても完璧で、そしてとても素敵であった。

新卒で住む家にしてはいささかやりすぎたというかカッコつけすぎた感じも否めないが、かっこいいのは事実であって、そしてここに住むことがとても素晴らしいことであるように思われた。

本を読んでいても、パソコンをいじっていても、料理をしていても、コーヒーを飲んでいても、前よりもワクワクする。これが自分が住む場所を選べる嬉しさなのかと一日一日噛み締めていた。

 

そうやって何日かが過ぎて、城崎温泉に旅行にいくことになった。

学生最後だからと奮発していつもは絶対に泊まらないような高級旅館を予約した。旅館につくと部屋に案内する人がいて晩御飯の時間を聞いたり、観光の情報を教えてくれたりと、いつもとまる素泊まり3000円の宿とは違うサービスに、どこか落ち着かない気分であった。食事は部屋で、ご飯も大変に豪華であり、カニの最後のシーズンであることもあり溢れんばかりのかに料理と、丹波牛のステーキ、しゃぶしゃぶが振る舞われた。そうしてたらふく晩御飯を食べ、温泉に入り城崎を満喫して就寝したとき、この豪奢にあまり喜んでいない私を発見した。

美味しいご飯が悪いわけではない、くまなく給仕してくれる人が悪いのではない、柑橘の浮いたいい匂いのする温泉が悪いのではない。

ただ、私にはこれは過度なのである。これほどまでは、求めていない。

この生活を続けていけば何時かは慣れて、この生活が楽しいと思える日がくるのかもしれない。しかしそうやって慣れることに現在の慣れていない私は価値を感じないし、別に慣れようとも思わないのであった。金銭の問題ではなく、ただ一人の人間として、これだけのサービスを受けることは、ちょっとやりすぎてねえか、と思うのである。一人でやれることは、一人でやりたいし、無理なことはお願いするかもしれない。でも出来る限り、自分でやりたいしそうするほうが健康的ではないだろうか。これもまた貧乏性ゆえかも知れないが。

私の感性は城崎ではなく大阪の我が家にあり、我が家でのんびり本を読み仕事をする方が落ち着くのであった。確かにたまに上の階の人はどしどしと歩くからうるさいし、温泉にも入れない、料理も勝手に出てこないし、洗い物はやらなければ貯まる一方だ。それでも私は、私が買うことが出来る程度の、私が気に入ったものがおいてある、我が家が好きなのであった。

城崎から帰る特急電車こうのとりで麦酒を飲みながら、そんなことを考えていた。