The sun rises again.

フィクション

研究室に行かない

昼頃に起きる。

前日少し酒を飲みすぎた。

原因は、一週間ほど前に半分ほど飲んだコノ・スルの赤ワインが残っていて、このままではだめになってしまうからいっその事今日全部飲んでしまえ、と思ったことにある。どうせなら炭酸も飲みたいなと思って500mlのロング缶の麦酒(といっても発泡酒だけれど)を買ってきて、ツマミをつくる。

白菜と豚肉を炒めてターメリックを入れたやつで、僕好みに辛めに仕上げてある。からさの元はチリペッパーである。チリペッパーの辛さは、豆板醤とかカラシの辛さと違うなんとも優しさのない辛さで、僕はこのヤケクソに辛い感じが好きなのだ。

晩酌を始めるとやはり麦酒は美味しい(発泡酒)し、コノ・スルも思っていたよりも駄目になっていなくて、美味しい。お酒が回って調子が良くなってきて、よせばいいのにウイスキーも飲み始めて、気づいたらウイスキーの残りもなくなっていて、しかも気づいたら追加でふかし芋も食べてしまっていた。

ふかし芋は別にすでにできたものが合ったのではなく、その場で作ったのである。レンジを使えば15分あれば作ることができるのだが、酔っ払った頭と体を頑張って使ってまで芋を食べようとする自分の浅ましさと胃袋への忠実さに、唖然とするしかない。まあその空腹はおそらくアルコールによって作られたものなのだけれど。

そんなふうにだいぶ飲んだので、昼間で寝ていた。

前日食べすぎたので、お昼は抜いて珈琲だけ。

15:00からのゼミに出席して、先生と1時間ほど研究の話をした。おそらく研究の報告に全く来ない僕に業を煮やしたのだろう、先生の方から「ちょっと話をしましょう」とアクションがあった。最近研究室に行くのをサボっているので、先生と研究の話をするのもかなり久しぶりである。

研究室に行きたくない理由としては主に2つあって一つは家でもいろいろと考えたり数式をいじったりできるということがある。

基本的に家が大好きで、できることならパン屋にパンを買いに行く時と晩御飯の買い出し以外で家から出たくない。なぜなら家には僕が必要とする者がずらっと並んでいるからだ。いつでも珈琲は入れ放題飲み放題だし、ちょっと気が向いたら哲学でも小説でも読むことができる。眠たくなったらベットで一眠りすることもできる。腹が減ればそばを茹でて食べることもできる。僕の欲求はだいたいこんなもので構成されていて、全て家で事足りてしまう。なので、絶対に出ないと駄目な時、たとえばゼミがあるだとか、就活のイベントがあるだとか、そういった時以外は家にこもりたいのだ。

もう一つは研究室が快適ではないということがある。パソコンも揃っているし、研究室にも珈琲メーカーはあるし、電気は使い放題エアコンはかけ放題ではある。しかし空気が悪い。空気というのは文字通りの意味と、雰囲気が悪いという意味の2つ両方共だ。

まず研究室はカビが生える。とにかく生える。珈琲を入れたフィルターを捨てるのを忘れて次の日研究室にくると、大量のカビが生えている。尋常ではないスピードである。これは明らかに人間にも悪影響を及ぼしているような気がしてならない。肺に胞子がコロニーを作っては困るのである。

雰囲気に関しては、研究室自体の会話がとても少ないということがある。最近はだいぶ話をする空気になっていたが、一時期なんかは挨拶もないし、全く一言も発さずに5時間ぐらい勉強だけして帰るなんてこともあった。これは積極的に僕が声をかけることでなんとか回避できつつあるので、そこまで大きな問題ではない。

というわけで、家から出たくない+研究室が嫌という二重苦により、僕は研究室に極力行かない。まあでもたまには行って、先生に教えを請うたり同期と話したり研究したりしたほうがいいのはわかっているのだけれど、もう卒業すること以上のことをしたくないししない、と決めてしまっているので、僕は多分これからも極力大学へ行かないだろう。

良いのだ、それで卒業ができれば。

別に家にいるから勉強ができないわけではない、研究ができないわけではない。朝はちゃんと起きているし(今日は寝坊したが)、本も最近は読むようになってきた。

昨日より、何かしらでもいいから一歩進んだ自分になること。

それさえ達成できていればいい、という風に思うようになった。

昔よりも自分に対して期待しなくなったということもあるかもしれないが、あまり深刻に考えているとそれこそ精神と体を壊してしまうことも、経験として認識しているからなのかもしれない。