The sun rises again.

フィクション

美容室

髪を切った。前回切ったのはちょうど3週間前で、そんな頻繁に切りに行くの?となるわけだけれどそれは前回の終わりに美容室のお兄さんに「3週間以内なら今回と同じ内容であれば1000円でできますよ」と言われしかもその場で次回の予約をさせられたからなのであり、特段髪を切りたかったわけではない。

しかし次回の予約をその場で、というシステムはだれが考えたのだろうか。上手なしくみだ。特に僕のような電話するのは死んでも嫌、なタイプは後で電話して予約を断るなんてことはできないし、そして結果的に僕はリピーターとなる。

 

まあこういうシステムは考えた人は偉いなと思う一方で、優れたシステムに乗っかっている自分、というのを考えてしまう。そしてそのシステムへなのかそのシステムを考えた人になのかわからないが、「お前の言うとおりになってたまるか」という気持ちがとても強くなるのが、僕という偏屈人間の思考である。

今猛烈に次回の予約を断ろうかどうかを考えているところである。電話をかけても。

しかし断ってしまうと、前回今回と担当してもらった若作り感のある幼い高校生みたいな美容師さんの歩合が下がってしまうと思うと、なんとも電話を持つ手が重くなるのも事実であって、そして不思議なのは別にそのお兄さんに対して僕は別に好きだとかどうだとか思っていないというところ。

どうでもいい。それが適切な表現である。

なんというか、無駄な殺生はしたくない、という動物愛護的精神なのかもしれない。そういう意味で僕は彼のことを特に人間だと思っていないのかもしれない。お話のできる、動物。若作りのできる動物。お話ができると行っても美容室にいるような人とはお話は合わない。というとちょっと差別的ではあるが事実僕の中高大の友達で美容室に今勤めている人間は一人もいないから許してほしい。そもそも興味のベクトルが違うのだ。モテたいから美容師になり、30手前で派手にパーマをしてしかも長髪である。僕にはできない、しろと言われてもことわる。それを自分から嬉々としてやっているわけであって、その世界は僕には理解できない。そして向こうもこちら側の気持ちを理解はできないだろう、そもそも理解する必要すらないのかもしれない。

 

そうこう思っているうちにカットが終わり、カラーも終わった。

 

若作りは言う。「さわやかボーイですね」。

 

何だそれは、客を煽っているのか貴方は。